新しい展開の中国語 会話

だが?人生は賭けであるとでもいいたいのだろうか、画面には余録があった。

「あなたの性格にあった老後を占ってみましょう」と、タッチパネルから自分の生年月日を入力させられる。 生年月日でみる星座占いだった。
これは、T海上が開発して大蔵省のおとがめで発売を断念した星占い保険と、発想が同じである。 国民のなけなしの資金をあずかる生命保険会社が、老後の生活設計にまで迷信を持ち込むのは、「当たるも八卦当たらぬも八卦」の投機とバクチで麻簿してしまった感覚である。
最後には、「資金づくりは相談コーナーでお教えします」「もっとくわしい情報を知りたい方は、御連絡先をお書きください」と画面にでる。 生活設計パソコンは、相談コーナーへの誘導装置だった。
相談コーナーの先には、実際に保険契約を締結する契約コーナーが用意されている。 生活設計パソコンから相談コーナーに向かわなくても、いわれるとおり正直に手元のカードに記入すれば、新しい見込み客として、自分の個人データをしっかりNに提供させられる仕組みだった。
幼稚すぎる仕掛けだが、その仕掛けに乗せられ、「資金づくりは相談コーナーでお教えします」という誘いに乗ることにした。 実りあるシルバーライフは買えるのか店長に「いまなにが一番、売れているか」と聞くと、「去年までは一時払養老保険ばかりでしたが、いまは新N年金です」といった。
相談コーナーの担当者である女子職員に、新N年金について相談をもちかけ、老後資金の試算をしてもらった。 相談員は、〈実りあるシルバーライフをつくる〉とうたった、新N年金(一時払)のパンフレットをひらいて、私の希望を聞いた。
「お元気なうちにいっぱい使えるタイプと、年に五%ずつ増えていく長生きにお得なタイプと、どちらにされますか」といった。 一族に長生きが多いから、「長生きがお得なタイプ」の方を選んでみた。
新N年金は、受取額がはじめは比較的多くても、毎年、逓減していく「定額型」と、はじめは低めだが、毎年、いくらかずつ増えていく逓増型と、二種類の設計になっていた。 どちらも受取開始から一○年間は死亡しても受け取れる保証期間つきで、死ぬまで受け取れる終身型だった。

だが、先立つものは、やはりマネーである。 最初、投入できる資金を五○○万円として試算を頼んだが、あとで聞くと、店長は。
○○○万円が普通です」といった。 私の実際の貯えからはほど遠いが、「普通」の人の身代わり相談者に徹しようと、途中で一○○○万円に訂正してもらった。
相談員が手渡してくれた計算書「おすすめプラン」は、システム一○○の端末で試算し、プリンターで打ち出されたものだった。 彼女は、「五二歳から五七歳までの五年間すえおきで、その間はNのなかで貯蓄し利殖します」と説明した。
要するに、Nに財テクをおまかせする金融商品である。 正確には九三一万九八○○円をいま一括して払い込めば、五年後、五七歳で受取開始となるが、確実に受け取れる契約年金が六○万円からはじまるという設計である。
六○万円の契約年金は、受取開始から二○年間は年五%ずつ増えて、六一歳では七一万円、七八歳では一七万円になる。 だから「長生きがお得なタイプ」というわけだった。
また、店長は、「インフレにもなんとかもちこたえられるように設計したものです」ともいった。 だが、受取額をあとにずらしたにすぎず、また、インフレによる目減りを、Nの含み資産から還元して補ってくれるわけでもない。
契約年金とは、Nが契約締結時に約束した最低限の受取額であり、あらかじめ低めに設定した利率で計算されている。 そして、Nの資金運用の実績次第で、実績に応じた増加年金がプラスされる。
計算書では、現在の段階の運用実績を基準にして、受取開始の契約年金六○万円には増額年金三万円がプラスして計算されていた。 だが、保証のかぎりでない。

計算書にも、増加年金は〈今後変動する(上下する)ことがあります〉〈将来のお支払額をお約束するものではありません〉と記してある。 第三章でみたT海上の貯蓄型損害保険の貯蓄部分と同じ仕組みである。
契約年金部分は、あらかじめ低めに決めた予定利率で支払われるものであり、増額年金部分は予定利率を超える実績があったときに、契約者配当金の名目でプラス・アルファとなっていたものに相当する。 だが、新N年金は、損害保険の貯蓄部分が多い商品ともちがっていた。
生命保険会社の商品ではあっても、そもそも保険とは無関係であり、一○○%の貯蓄商品である。 もっとも、契約者の希望によって特約、つまり特別の約束で傷害、災害入院、医療の保険料を別に支払えば、付録として保険をつけることができないわけではない。
それはあくまで特約であって、計算書にも一応、特約の保険料や給付金を記入する欄があるにはあったが、相談員も特約をつけるかどうか最初から聞きもしなかった。 する第一号店なのだ。
店長も、「生保会社は、ここへきて国債とか抵当証券もあつかっていますから、これからはもっと幅広い形でお客様に接していこうと、あらゆるマネー情報や金融商品を紹介しています」といった。 もはや、保険屋が売る商品は保険とはかぎらなくなった。
また、その商品が、たとえ保険の名をつけられていても、保険とはかぎらなくなっている。 保険であったり、保険もどきであったり、保険とは無関係な金融商品にすぎなかったりする。
これこそ、Nが志向している〈総合生活保障サービス産業〉なるものを体現した金融商品であり、N・ライフプラザ新宿は、〈総合生活保障サービス産業〉を志向開店後三ヵ月の感想を求めたとき、店長は、「痛感しましたことは、いまはじめて庶民にとって革命的な時代になって、おカネを商品として選ぶ目が必要になってきたということです」といった。 また、「一般消費者は、金融商品を商品として見る目を身につけなくちゃいけなくなってきました」ともいった。
ともかく、公的年金だけでは老人一世帯の実支出月平均二八万円(年平均三三六万円)にもほど遠く、一○○○万円の新N年金を買ったとしても、受取額は年六○万円余、月数万円にすぎない。 月四二万五○○○円(年間五一○万円)はいる「理想の老後」や〈実りあるシルバーライフ〉は、平均的な勤労者には買えない。

金融商品を買って運用できる資産を持っている人だけが、「理想の老後」や〈実りあるシルパーライフ〉にありつける。 自民党機関紙『自由新報」(三月八日付)は、生命保険協会の「生命保険にもっと税制面での応援を」という大型広告とともに、W美智雄自民党政調会長とW泰之生保協会会長との対談「やってくる長寿社会重み増す生保業界の役割」を掲載した。
そのなかで、W政調会長はつぎのようにいっている。 〈老後を政府がまるがかえで、豊かな暮らしまでみられるかというと、若いときうんと遊んじゃって貯しかし、〈余裕に乏しい〉消費者は、助けると〈怠慢になって働かない〉から、〈助けてはいかん〉というのが、現在の政府・自民党と生保業界の考え方である。
政府・自民党は、生命保険料控除も含めた税制についても、こうした立場から大衆課税の大型間接税の導入に熱を入れている。


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